マイグレーション検討時の事前調査

マイグレーション準備

昨今の企業内の業務アプリケーション環境は、消費税対応やOS・DBのサポート終了への対応のみならず、売上計上の「新収益認識基準」対応など、かつてないほどに変更対応に迫られています。そしてさらに、今回、突然のコロナウイルス禍の影響で在宅勤務やテレワーク推進を世界的に余儀なくされた中で紙媒体帳票出力からPDF配信などの電子媒体への出力変更が、急遽、企業間でも求められるようになりました。

もちろん、今年度のさまざまなIT投資計画も、その規模や方向性、優先順位を大きく変えざるを得ない状況と考えます。こうした中、TCOと緊急性とを見据えたマイグレーション(+システム改修)の必要性がこれまで以上に高まっていると感じます。

しかし、マイグレーションを検討するには、やはり限られた時間の中でも事前調査をしっかりと行うことが重要です。


なぜ事前調査が必要?

PowerBuilderで開発したアプリケーションの場合、画面や帳票プログラム開発がGUI操作で直感的に容易に作成できることからプログラム設計段階からPowerBuilderでイメージを作成し、そのまま開発を進めてしまう経験がありませんか?結果的に後から「プログラム設計書がない」、「テスト仕様書がない」と作成者ご本人のみならず引き継いだ後任者が、アタマを抱えることになってしまいます。こうした傾向は、残念ながら現行のアプリケーションが古いバージョンで作成されたアプリケーションほど顕著であり、「プログラム自体が設計書…?」とため息すら出てこない状況になりがちです。

現行アプリケーションを新しいバージョンのPowerBuilderでマイグレーションする場合、仮にプログラム設計書がなくても完全なソースファイル(ファイルシステム上のファイル単位。以下、本ページ内ではpblファイルと省略)があれば、マイグレーションそのものを行うことは可能です。しかし、これは現新比較テストやデータ整合性テストおよび保守作業のリスクが多く残ることになります。そのようなアプリケーション資産全体に対するリスクを洗い出すためにも、ドキュメント類を含めた現行資産の状況を先ずは把握することが、とても重要になります。その上で、マイグレーションプロジェクトに対するゴールを設定し、現物の有無確認などの全体像を鑑みてあらかじめ発生するであろうリスクを想定しながら対処方法を検討した移行計画を立てます。こうした作業は、実行段階でスムーズなマイグレーション作業や安定的なアプリケーション利用に繋がります。そのためにもマイグレーション作業を行う前に事前調査が非常に重要です。

それでは、以下に事前調査についてご紹介します。

事前調査の内容

 

資産の棚卸し

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マイグレーション予定のアプリケーションに対してドキュメント類や機器の資産を把握します。

  • ドキュメント類(プログラム設計書、テスト仕様書やpblファイルの有無など)
  • ハードウェア(PC、DBサーバーやプリンター情報など)
  • ソフトウェア(現行環境のOS・DB・PowerBuilderバージョンなど)
  • 連携しているアプリケーション(連携しているアプリケーションの有無や連携方法など)

その他、出力するファイルの形式なども調査します。


 

マイグレーション対象の検討

マイグレーション予定のアプリケーション選定や順序について検討します。

  • マイグレーション対象となる機能や画面について使用/未使用を含めた精査
  • 複数のアプリケーションが存在する場合、マイグレーション対象となるアプリケーションの範囲
  • 複数のアプリケーションが存在する場合、全アプリケーションを一度にマイグレーションする、段階的に行うといったマイグレーション順序
  • 業務の重要度などにも影響しますが小規模アプリケーションからマイグレーションを行うことで、マイグレーション時の傾向や注意点を把握する、マイグレーション後の環境を利用してマイグレーション後のアプリケーション動作を確認するといった手法を取ることもできます。

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マイグレーション後の環境調査

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マイグレーション後の動作環境を調査します。

  • ハードウェア(PC、DBサーバーやプリンター情報など)
  • ソフトウェア(新環境のOS・DB・PowerBuilderバージョンなど)
  • 連携しているアプリケーション(連携方法など)

マイグレーション後の環境はアプリケーションや連携しているアプリケーションに影響を与えることもあるため、動作要件を事前に決定しておく必要があります。


 

作業のアウトプット

    資産の棚卸しや対象範囲、環境を調査した内容をインプットとして検討を行います。マイグレーションに関する検討も行いますが、ここではハードウェアやミドルウェアの納品時期、データ移行、トータルコストを含めた全体的な検討を行い以下にアウトプットしていきます。

    • コスト
    • スケジュール
    • ユーザーテスト、並行稼働
    • マイグレーション後のアプリケーション改修

    プログラム設計書など不足しているドキュメント類の作成を行う検討も行います。

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コストやスケジュールを検討する段階でPowerBuilderマイグレーションに関するコストやスケジュールも必要となります。その際、社内に必要なリソースが足りずマイグレーションのタスクを外部に委託することを検討するケースもあるかと思いますが、マイグレーションのコストやスケジュールの見積を委託先に依頼する場合に必要となる一般的な情報について以下にご紹介します。

見積時に必要な情報

見積には概算見積正式見積といった種類があります。

概算見積の場合は、現行アプリケーションと新しいアプリケーションで利用する環境や下記オブジェクトごとの数PBL数の情報から算出を行います。

  • Application(Exeとなる数)
  • Window
  • DataWindow
  • Function
  • UserObject
  • Menu
  • Structure(構造体)

各オブジェクト数はオブジェクトブラウザや一度各種オブジェクトをエクスポートしたうえでカウントすることが可能です。

概算見積の場合は、オブジェクト数に対して係数などを掛け合わせて工数や期間を算出するためスピーディーに見積が算出できますが、pblファイル分析までは行わないためあくまでも目安程度となります。

より精度の高い正式な見積を行う場合は現行アプリケーションと新しいアプリケーションで利用する環境の情報に加えて、利用されているpblファイルを受領したうえで細かく分析し見積を行う必要があります。

正式見積は正確な見積となりますが、pblファイルを調査したうえで見積をするため、見積算出まで一定の時間を見積る必要があります。


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