異世界に転生したらPowerBuilderが、最強だった…?Vol.3

転生vol.3

「ねこぴ…?いや、なんだあれ…棒?」
見覚えのある四角い猫型シルエット…でもやけに小さいような…?なんかのステッキか…???タカシは、少し首を振り、立ちながら呟いた。 

それは、眩い光をジジジッ…と波打たせながらも、次第にその姿が明らかになってくる。タカシは、瞬時にマーリンに目をやりながらもイスの袖を力強く握って身構えた。非常灯の薄暗い灯の中、大型モニターの前に立つその物体がとうとう姿を現しはじめる。
それは、小さい子供のような生き物だった。真ん丸な頭に…猫耳?瞳はどうやら閉じられている。

ねこぴ変身

ロボットか?それとも生き物?なんだあれ??
「とりあえず、攻撃性は…ない?」とタカシは眉をひそめ呟いた。

すると突然、室内が明るくなった。停電が収まったのか?と少し身体の力が抜けるのを感じるのと同時に、外からは数人の会話が聞こえた。オフィスの時計は、7時25分を指している…まだみんなが出社してくるには時間がある。

丸い子供のようなこの存在は、右手にねこぴに似たステッキ?を持ったまま、微動だにしない。
「どうしよう…?今のうちなのか?急いでマーリンを担いで部屋を出ようか?」

戸惑いつつも、意識を失ったままのマーリンを見た。このままイスに乗せてドアまで運ぼうか?などと考えていると…突然「キュピーンッ!」という音と同時に、子供?が手に持っているステッキのようなものが、光りながら回転した。
「ヒャッ…!」タカシはびっくりして思わず両手を上げて叫んでしまった。(冷静に振り返るとものすごく情けなくて恥ずかしい…。)

「起きるにゃあ…!」と、なんだか眠そうな声が部屋に響いた。

「えっ?」聞き覚えのある懐かしい声に、思わず間の抜けた声が洩れた。ステッキのふしぎな光が子供の全身を包み込んだかと思うと、それがサアッと晴れて、ようやくその全身が鮮明になった。

「転移できたかにゃ?」と、それは辺りをキョロキョロ見回してからこちらを向いた。
その動作は紛れもなく生き物だ。人間の子供のような顔立ちで、クリッとした大きな青い瞳で、可愛らしい姿…男の子?女の子?そして、白衣のような上着と青地の可愛いスーツを身に着けていた。

その子供は、呆気に取られているタカシに向かって「あっタカシ!なにボーっとしてるにゃ?」と右腕を突き出した。
右手に持つそのステッキ…忘れるはずもない…先端には、入門動画で散々見た、あのねこぴの装飾が飾られていた。
タカシは、乾ききった口を開き「なんで俺の名前を知っているんだ?お前は一体…?」と問いかけた。

「名前?何言っているんだにゃ。タカシに会いにわざわざその子を使ってわいは転移してきたんだにゃ!」とマーリンを見ながら口を開く。
「わいは…ねこぴ!!! PowerBuilder のことで、お前に重要なミッションを伝えにやって来たにゃ!」とタカシに告げたのだ。

ねこぴ現る

「えっっっねこぴ?!ミッション?!」
理解が全く追いつかないタカシは、オウム返しで叫んでしまった。
「そんなに時間もないし…う~ん、説明どうしようかにゃ?」ねこぴを名乗る生き物が、ステッキを持って困ったように話す。
「お前の知っているねこぴは、こっちだにゃ?」と手に持つステッキを指さした。
「フフン♬これも確かにわいだけど、これはお前が元の世界で見てきたねこぴ…いわば、わいの分身だにゃ…!
今、お前の前に居るわいこそがッ!本体のねこぴ!!そして、わいはこの世界に転移した今、お前に大事なことを伝えに来たんだにゃ…!」と語る。
(ぶ、分身?本体?確かに、声は似ているけど…そんなことある??)いろいろと聞きたいことは山ほどある…が、タカシはやや冷静さを取り戻しつつある自分を感じた。

「大事なことを俺に?」

「そうだにゃ!よく聞くにゃ?」ねこぴはコホン、とやや勿体ぶるような咳をすると、真剣な表情で語り始めた。
「タカシ…お前の居た元の世界で、 PowerBuilder が絶滅の危機なんだにゃ!!!
アッ、違う違う、正確に言うにゃ… PowerBuilder で開発したソフトウェア資産が、粗末に葬られようとしているんだにゃ!」
(どういうこと?!)タカシは思いを巡らせる。

「お前が居た世界は、クラウド化…システム環境がその潮流に乗っていることは覚えているかにゃ?けど、それが間違った方向というか…一番大事なものを置いてけぼりにして進んでしまっているんだにゃ…。」ねこぴは悲しそうに呟いた。

(一番大事なもの…?)タカシにはその表現が気になった。
(自分が『データウィンドウ』に出会う前から思うことはある…。でもクラウドとは直接関係ないことだし…。)

「一番大事なものって…?」タカシが訊ねる。

「さっき言ったにゃ! PowerBuilder で開発したソフトウェア資産にゃ!」とねこぴが不満げに話す。
「それはつまり…?」タカシは確認するように改めて尋ねた。

「だ~か~ら!ソフトウェアの本来の価値評価が置き去りになっちゃってて、なんでもかんでもクラウドにゃ!」
ねこぴはイーーッと唸った。
そういうことか…タカシは、納得したように少し頷いた。

どんなシステムでも時間の経過とともに老朽化するし、社会や経済自体が変革を繰り返す中で、ソフトウェアもスクラップ&ビルドを繰り返すのは自然なこと。それは、恐らく Java や他の言語でも同じことが言える。とどのつまり、最終形というのは存在しないのかもしれない。
大事なことは…開発者と利用者のそれぞれが、その変革の中で「利用しているソフトウェアの価値をもっと上げていこう!」「こうすればより良くなるはずだ!」と侃々諤々と改修していくことだ。
そういう議論の中で開発してきたシステムには開発者も利用者もソフトウェアに対してリスペクトを持って、正しく評価して活用しようとする意思が伴う。特にスクラッチ開発の業務システムは、ユーザーを取り巻く個々の環境変化や業務範囲の中で改修を繰り返して、ユ ーザーの成長を支えるため開発される、言うなれば…№1ではなくオンリーワンの存在なのだ。

ソフトウエアの価値

つまりは、成長の基盤となって縁の下でユーザーを強力に支えてきたのだ。
だからこそ、ソフトウェア資産の価値を保ち続けられるように、敬意を持って努力を怠らない真摯な対応が必要なのだ。
(ねこぴが言いたいのは、恐らくソフトウェア資産の価値をちゃんと評価せず、単に「クラサバシステムだから」と蔑ろに考えたしまう風潮そのもの…だろう。)
稼働当初から現在まで、一体どれだけの価値を提供し続けたのか?どれだけの業務改善を実現し、事業貢献してきたのか?

クラウド化の潮流の中で、過去に開発して減価償却も終わったクラサバシステムの PowerBuilder ソフトウェア資産は、ろくに投資もされない。新しい OS 環境でも大きな問題なく動いたからそのままで使えばいい…的な、マイグレーションせずに使い続けているユーザーは多い。けど、それって PowerBuilder のソフトウェア資産に限った訳じゃないし、いろんな理由や経緯があってのことだからな…。
タカシは、こちらに転生する直前にアサインしていたマイグレ案件に想いを馳せた。
素晴らしいシステムだった。ソースを細部まで分析する過程で、データウィンドウを巧みに活用してロジック部や画面設計・開発を行い、 DB アクセス回りは SQL を直に書きながらプロセスを組み立てていた。それを見るだけで、開発した人の想いに辿り着いた気にすらなって、感動したことが何回もあった。(挙句の果てに、会ったこともないオペレーターの顔まで勝手に浮かべて悦に浸っていたこともあった…)
タカシが、ここに転生するときに得たチート能力『ソースコードを脳内でイメージ化、そのまま脳内でシステムをコンパイル&実行し、デバッグやテストが可能』は、タカシのエンジニアとしてのソフトウェア資産への強い畏敬の念があるから獲得できたのだろう。

「ねこぴ、要は…葬られないように PowerBuilder の良さを伝え続ければいいだけだ!」と真剣な顔つきで伝えた。その言葉に、ねこぴはニコリと笑う。
「話が早くて助かるにゃ…。いいかにゃ、お前はこの世界で PowerBuilder を最強の IDE にするんだにゃ!わいは、元の世界で PowerBuilder の良さをもっと広めるにゃ!だから、コレを使って PowerBuilder の実践的な魅力を伝えるアドバイスをわいにしてほしいんだにゃ。」
そう言うと、ねこぴは右手のステッキを掲げた。
タカシはちょっと拍子抜けした感じで「えっ…ソレで?」と呟く。

ねこぴ棒

「ねこぴスティックだにゃ!これは通信や転送が出来るアイテム…特別に一本やるにゃ…フフフ」
ねこぴはコートの中からもう一本取り出して、そのねこぴスティックをタカシに手渡した。
「わいとお前で一本ずつだにゃ。お前は元の世界には戻れないから、このねこぴスティックを使ってわいと連絡を取り合ってほしいんだにゃ。使い方は簡単!なにか話したり見せたい時にここのボタンを押してから、対象物に向けるにゃ。」

とザックリすぎる説明をいただいた。ボタンを押してみると、スティックのねこぴ冠部分が光る。そうして、目の部分がパチパチと眩く光るのだった。

( Vol.4 に続く…)


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