ビッグデータ活用の基盤となる ETL ツールの開発に活用 パナソニック株式会社様事例
ビッグデータ活用の基盤となる ETL ツールの開発に活用
現場で必要なデータを取得でき、効率化・生産性向上に寄与
幅広い事業を展開しているパナソニックは、データを活用するためのさまざまな取り組みを行っている。その基盤となるデータ収集・集計・加工を担う ETL ツール「TrAQ」は、短期間で品質の高いソフトウェアを開発できる統合開発環境「PowerBuilder」でスクラッチ開発された。PowerBuilder のメリットや効果などについて、パナソニックのマニュファクチャリングイノベーション本部・モノづくり強化室・AI・データアナリシス技術課・シニアエンジニアの原伸夫氏と、同部署の院南皓一氏に話を伺った。
■「モノづくり」を起点に幅広い活動をするマニュファクチャリングイノベーション本部
パナソニック株式会社は、「くらし事業本部」、「オートモーティブ社」、「エンターテインメント&コミュニケーション事業部」、「ハウジングシステム事業部」、「コネクティッドソリューション社」、「インダストリー社」、「エナジー社」、「オペレーショナルエクセレンス社」を中心としたグループ体制で事業展開している。
「当社は、家電や電池、デバイスなどを製造・販売しています。我々マニュファクチャリングイノベーション本部の前身は 1963 年に民間企業初の生産技術部門の研究所として発足しました。全社の生産技術について担当している部門であり、過去から進化・蓄積してきた生産技術プラットフォームをベースに、事業部の開発現場や、工場での生産革新活動、モノづくり人材の育成による現場力の強化を行っています」と原氏は語る。
同部署は、生産技術の研究に加え、現場での「モノづくり」改善提案などコンサルティング業務も行っている。
■AI 活用のため当社独自のデータ収集・加工基盤が必要に
「我々はソフト生産技術を担当しています。AI を活用してデータを分析し、不良率を下げたり、工場の稼働率を上げたりすることで、工場の生産性を高めるための取り組みを行っています」(原氏)
データを使って不良が出る原因を突き止めたり、製造装置のボトルネックを改善したりすると、工場全体の生産性が上がり、効率よく業務が回るようになる。マニュファクチャリングイノベーション本部は、こういった支援をしているというわけだ。
「データを活用するためには、稼働している機器からデータを集め、使いやすいように加工する必要があります。しかしこれまでは、そのために DWH(データウェアハウス)など大規模なシステムを導入する必要があり、コストと運用工数が課題となって導入できませんでした」(原氏)
パナソニックでは、IoT 等を活用して工作機械など多くの製造関連装置の情報を取得し、データベースに格納していた。ある程度の効果が想定できるレベルのデータを集計・分析する上では表計算ソフトでも出来たが、数百・数千という膨大なパラメーターから未知の関係性を新たに発見し、改善するというニーズには全く対応できなかった。そこで、散在している生データをデータベースから自在に抽出・収集しつつ、扱いやすい簡単な GUI で適切に変換・加工するETLツール「TrAQ」を独自開発することにしたのだ。
■ローコード開発でも高い完成度を誇るデータウィンドウの底力
このツール開発に使われたのが「PowerBuilder」だ。PowerBuilderは開発生産性が高い統合開発環境で、Windowsアプリケーションの開発を軸とし、1991 年にバージョン 1.0 がリリースされて以来、多くの企業がPowerBuilderを使ってアプリケーションやサービスを展開している。SQL Server や Oracle データベースなどのネイティブ接続に対応し、ODBC(Open Database Connectivity)を使えば PostgreSQL などのデータベース接続も可能だ。
「PowerBuilder には関数やデータウィンドウなど必要な機能が揃っており、開発しやすいツールです。スクラッチ開発した TrAQ は、着手から 8 ヶ月ほどで基本となる部分が完成し、そこからは実際に運用しながらブラッシュアップしていきました。開発時間より、現場とのすり合わせに多くの時間を使うことができたのも、開発生産性が高い PowerBuilder のおかげです」(原氏)
PowerBuilder はローコード開発である上に、他言語でのスクラッチ開発と比べるとバグが少なく完成度が高く、テストの時間を大幅に短縮できるという特長がある。
「PowerBuilder を使う最大のメリットは完成度が上がること。ローコード開発のメリットです。PowerBuilder だけではできないこともありますが、他言語のライブラリなどを活用することで細かい部分の作り込みもできます。そういった意味でも優れた開発ツールだと思います」(原氏)
PowerBuilder の歴史は古く、ポータルサイトではノウハウや FAQ などの情報が豊富で、こういった情報を調べるだけでも、多くの問題が解決できる。「何か問題が起きても、問い合わせをするとすぐに回答が得られますので、とても助かっています」(原氏)
■PoC にうってつけの PowerBuilder
こうして開発された TrAQ は国内外の工場で使われており、現在でもユーザーを増やしている。
「設備を制御している環境は多種多様のため、OS のバージョンやデータベースもバラバラですが、PowerBuilder は複数の OS バージョンやデータベースをサポートしているので、アプリケーションの根本を変えることなく汎用的に使用できて助かっています。TrAQ を使うことで、作業にかかる時間が 10 分の 1 まで削減できている事例もあります。効率化という点では、かなりの効果を発揮しています」(原氏)
「ETL ツールが本番運用できたことで、ユーザー自身がそれぞれのニーズに応じてデータを取得できるようになりました」(院南氏)
データウィンドウによって抽出データを視覚的に確認することができるので、抽出項目ミスもダウンロード中に発見しやすく、大幅なタイムロスに繋がる無駄な手戻りを防ぎ作業効率や生産性向上にも寄与しているというわけだ。
「人が使うだけでなく、自動的にデータを収集・加工し、解析できるようにもなっています。AI の分析で使うデータも ETL ツールで収集できるため、活用の幅が広がっていると感じています」(院南氏)
ETL ツールは開発から 8 年ほどが経過しているが、現在では数百人の現場ユーザーが活用しているという。
「初期の TrAQ は 32 ビット版であったため、データ数の増加に応じて動作が不安定になったが、64 ビット版にしたところデータ数が増えても問題なく対応できるので非常に助かっています。PowerBuilder はバージョンが上がっても下位バージョンのコンパイルができるため、以前開発したものもそのまま使うことができます。こういった細かい配慮があるのも PowerBuilder の強みだと思います」(原氏)
PowerBuilder は、長期間にわたって使い続けることができる開発ツールだ。これまでの歴史がそれを裏付けている。パナソニックでは、今後も PowerBuilder を使って業務効率や生産性向上を実現していくだろう。
プロフィール
会社名 | パナソニック株式会社 |
設立 | 1935年12月 |
資本金 | 2,590億円 |
従業員数 | 243,540名 |
Webサイト | https://www.panasonic.com/jp/home.html |
取材月 | 2022年3月 |
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