PowerBuilderで製造現場メンバーと一丸となったアジャイル開発 フェイスラボ株式会社様事例

PowerBuilderで製造現場メンバーと一丸となったアジャイル開発

短期間で抜群の生産性を実現し、DX推進の一歩を踏み出した

フェイスラボ株式会社は創業以来、「心技一体」を企業理念に、世界中の「美」と「健康」に貢献するため、あらゆるご要望にお応えする豊富な開発製品/国際規格の水準をクリアした品質管理体制/多様なお客様のニーズをトータルサポートできる提案営業力/新しい価値を生み出す研究開発/世界を市場に、海外へ向けたサポート力、これら5つの強みを活かした化粧品・医薬部外品、健康食品などの企画立案から受託製造(OEM)までをサポートする製造会社である。
同社の「製造実行システムSWiFT※1」の開発に使われたのが「PowerBuilder」だ。PowerBuilderのメリットや効果について、フェイスラボのICT推進課の藤田達弘氏に話を伺った。

※1 開発や導入に関わったメンバーの名前(イニシャル)を組み合わせて名付けた

■製造現場のニーズを実現するシステムをスクラッチ開発

フェイスラボは、100社を超えるクライアント企業と共に活動し、さまざまなニーズに応えた商品の製造・開発を行っている。

「当社は、主に国内では本社機能および化粧品や医薬部外品、健康食品などの製造・研究・開発を行っている袋井工場(静岡県袋井市)と、健康食品の製造の掛川工場(静岡県掛川市)、そして営業部門、マーケティング部門、研究・開発部門がある東京事業所(東京都港区)の3拠点があります。各拠点には最新の生産設備や研究開発のための機器を備えており、お客様と一緒になって市場ニーズに応えた商品を作り上げる環境を整備しています」とICT推進課の藤田達弘氏は説明する。

同社のICT推進課は情報システム部門で、インフラストラクチャーの構築・整備・運用やクライアントパソコンの管理・運用、業務で使う情報システムの開発・保守・運用、DX推進など、同社のデジタル化に関するあらゆる業務を担っている。

■パッケージシステム運用だけの限界に直面

「生産管理システムや基幹システムなどの上流の業務は、パッケージソフトで問題ないですが、当社のようにお客様のさまざまなニーズや急な変更に対応をする場合、現場に近い業務システムほど現場のニーズに応えねばなりません。当然に、それは個別開発が必要です」(藤田氏)

ICT推進課がスクラッチ開発した業務システムの代表格が、「製造実行システムSWiFT」だ。生産管理システムや生産設備と連携し、在庫管理やピッキング、原料、中間製品、バルク製品の投入チェック、製造チェックなどを行うSWiFTは、ハンディターミナル運用を含めすべてPowerBuilderで開発された。


「PowerBuilder」は開発生産性が高い統合開発環境で、1991年にバージョン1.0をリリースして以来、多くの企業がPowerBuilderを使ってアプリケーションやサービスを展開している。SQL ServerやOracleデータベースなどのネイティブ接続に対応し、ODBC(Open Database Connectivity)を使用してPostgreSQLなどへのデータベース接続も可能なため、データベースや帳票などを扱う業務アプリケーションの開発に最適で、製造業や流通業など多くの企業に今なお活用され続けている秀逸な製品だ。

「SWiFTを開発する前は、秤量などの製造業務の効率化を目指し、ハンディターミナルとバーコードを使った在庫管理パッケージの導入を進めていました。しかし、このパッケージではお客様の要求に柔軟に対応したり、現場のノウハウや経験を生かした運用に対応することができなかったため、製造の運用に関わるところで導入が頓挫していました」(藤田氏)

化粧品や医薬部外品、健康食品などのプロセス製造は、特に秤量に時間が掛かる。化粧品は1製品あたり約30種類もの原料の秤量が必要であり、ヒューマンエラーによってミスが生じると、品質が保てないリスクが高い。加えて、いざ製造段階でお客様や品質管理部門から急な変更や修正依頼があると、システムとしては最初まで遡って製造指図データを作り直してから製造指示書を再発行する必要があり、こうした作業に短期間で対応させられる現場はかなり疲弊していた。

「着任早々、システムのためにどんどん疲弊していく現場を、ICT推進課が何とかしないと…事態の深刻さに直面しました。そこで私は前職での経験を活かし、現場の要求を満たす製造実行システムの開発にすぐに着手しました」(藤田氏)

これまで藤田氏は、PowerBuilderでさまざまな業務システムを開発してきた。その経験から、現状のシステム仕様を分析する過程で、短期間で必要な要求を満たすシステムを開発できると考えたのだ。

「PowerBuilderは開発スピードが速く、データベースの更新や検索ロジックなどをコーディングする必要がありません。その分、画面設計・入出力項目や処理フローをヒアヤリングしながらその場で開発した画面を見せて、こんな感じですか?と製造現場メンバーとその都度、お互いが意見を出し合い確認・修正しながら一緒に創り上げることができたのです。だから立ち上がりも早いですよね」(藤田氏)

藤田氏は、製造現場に赴いて丁寧にヒアリングを行い、現場メンバーと一緒にシステムをアジャイル開発した。その結果、2ヶ月ほどでSWiFTの基本的な機能を実現し、その後は順次必要な機能を追加していった。現在SWiFTは、在庫管理や移動管理、ピッキング、投入チェック、製造チェック、製造実績管理などをワンパッケージにした製造実行システムとして生産性向上や業務改善に貢献している。

PowerBuilderでアプリケーションを開発
ハンディターミナル画面
















■ハンディターミナルのリモートデスクトップ運用を活用し、アプリはPowerBuilderでスクラッチ開発、秤量設備や製造装置とも連携しDX化を実現

「現場からは『作業効率が上がった』と喜ばれています。SWiFTは、ハカリや生産設備とPLC※2連携しています。ハカリとのデータ連携は、ハンディターミナルスキャンで、指図値に対応したハカリか、作業手順通り進めているか、秤量対象は正しいか(品番、ロット、合否判定、使用期限)のチェックをしつつ、ハカリから取得した秤量値が指図値と一致しているかをチェックし、正しいハカリを使い正しい手順で指図通りの秤量ができた時に限り次工程に進めることができようにしました。また、生産設備との連携では、ハンディターミナルスキャン時に、指図の内容と設備に手動設定した内容が一致した場合に限り、生産設備の開始ボタンが使用可能になる仕様としました。このようにしているためミスが起こらないつくりになっています。ハンディターミナルの作業レスポンスは、リモートデスクトップ運用なので早いです。そして、SWiFTは生産管理システムとも連携しているので、データ上の在庫と実在庫との差異が激減しました。袋井工場で約60トンの総原料が棚卸後の差異で数百kgあったのですが、連携後は差異が10Kg程度と飛躍的に精度を上げられました。在庫の棚卸業務にかかる時間も以前の4分の1程度まで削減できて、生産管理部門からもびっくりされました」(藤田氏)

SWiFTを導入してからは、業務改善や管理に必要なデータは現場担当者に負担を掛けることなく自動的に取得し活用できるようになったからだ。

ハカリから秤量値を取得
取得した秤量値を確認
生産設備のタッチパネル
タッチパネルとも連携














「SWiFTは、ピッキング実績としてロケーションコード毎のピックアップ回数を常時モニタリングし、よく使う原料はより近くに配置してフリーロケーション化に繋げ、原材料毎の秤量時間も自動計測して手順の見直しを行うなど、現場主導のカイゼン活動のPDCAに役立ててもらっています。作業者に手入力させず作業時間を自動収集しているので、DX化に繋がっています」(藤田氏)

ピッキングリストを
取り付けた台車
ピッキング実績を
リアルタイムで確認


     BIツールで各業務の実績を分析




藤田氏は「SWiFTを活用することで、年間1千万円以上のコスト削減効果を生んでいます」と言う。さらに「ICT推進課の技術継承にもPowerBuilderが活用できる」と考えているとのことだ。

■学習コストが低く、短期間で習得できるPowerBuilderはメンバーの成長が早い

「PowerBuilderは学習コストが低く、IT業界からの転職者で1〜2ヶ月程度。開発未経験者でも半年ほどで習得することができます。また開発したシステムの内容についてもエンジニア同士で共有しやすいため、プログラムの属人化という問題もありません。事業継続という観点からも有効な開発環境だと思います」(藤田氏)

現在、同社ではSWiFTの外販も検討している。「当社と同じような課題を持っている企業は多いのではないでしょうか。SWiFTはスモールスタートが可能で、現場のレベルに合わせたシステムの拡張ができます。ライブラリの提供なども可能なので、お気軽にご相談いただければと思います」(藤田氏)

インタビューの最後に藤田氏は、次のように語る。「PowerBuilderの研修会やユーザー同士が集まって情報交換できる場があるといいですね。PowerBuilderのノウハウの共有は、現場のDXのさらなる加速と業務改善に必ず繋がることと信じています」。

 

プロフィール

フェイスラボ
会社名 フェイスラボ株式会社
設立 1995年7月
資本金 4,000万円
従業員数 297名
Webサイト https://www.facelabo.co.jp/
取材月 2023年1月

 


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