異世界に転生したらPowerBuilderが、最強だった…?Vol.5

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「タカシさん、お帰りなさい♬」と声を掛けてきたのは、新しく開発メンバーに入った天使族のチェリコだった。エルフ族のヒロリンが、長期の新しいプロジェクトへ異動となったので、彼女が交代でメンバーに加わった。

色白でスレンダーな背の高い天使族の美人さんである。「ああ…チェリコ、ただいま。」タカシは、重たいリュックを自分の机にドサっと置きながら、アクーツクとの打ち合わせに向かう彼女に笑顔で返事した。タカシは、初夏の頃から各地のPowerBuilderエンジニアに会いに行っている。1ケ月間程度…出かけたと思ったら、帰って来ては、ねこぴへの報告に数日費やす…その繰り返しだ。季節は、冬の訪れも近くなり、まさしく紅葉映える晩秋なのだ。山吹色のハイネックセーターのチェリコの後ろ姿を眺めながら(天使族は、普段、羽はどこに納めてるのかな…?チェリコも飛べるのかな?)と羽が気になるタカシであった。

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この4ケ月で訪問した先は、概ね40社…同一地区で約10ケ所ずつアポを取って訪問する。インタビューのパターンは特に決めず再訪も視野に入れて、PowerBuilderエンジニアとの会話を楽しむようなアプローチだ。言い忘れたが、この世界ではタカシの会社がPowerBuilderライセンスを販売しているのだ。だからか、逆にウェルカムで訪問を楽しみにしているエンジニアも多いのだ。訪問時は、ホントにもう色々な話をする…PowerBuilder製品のことはもちろん、構築しているシステムの話やそれこそ彼らの家族の話まで…時間の許す限りエンジニアたちの話を聴き続けた。この4ケ月で4地区、インタビューに応じてくれたエンジニアは、凡そ100人くらいか…この世界だから人種はさまざま…特に偏りも無い。地域の特性は、それなりにはあった。精密機器製造業が密集する地域やエンタメの聖地のような賑やかな地区など、また大企業群の本社が多いビックハンドストリート地区では、クリエイティブな方々が多くて、妙に背伸びした感じで対話する自分に少々疲れた。 1つの地区が終わるたびに、ねこぴとスティックを通じて色々と報告をした。もちろん、この活動はスタートしたばかりなので、ねこぴも「そうにゃのか?にゃるほどにゃ…フムフム」と丁寧に相槌を打ってくれるのだが、逆にそれが辛い。自分の報告内容にさほど満足していないと感じていたからだ。(元の世界で戦うねこぴにとって、何かの道標になる情報…ってなんだろうなあ?)とタカシは焦っていた。

だから、今回の出張の報告もこれまでの3回と同じようにねこぴに??と悩んでいた。なんだか申し訳ない気持ちになりながら、タカシは椅子の背にもたれながら組んだ両手を頭の後ろに回して瞼を閉じた。(4ケ月…40社…結構、回ったなあ…100人くらいに会ったか…?)面談した一人一人の顔を浮かべる…。フっと瞼の奥で無意識に(40社なのに…100人程度…?ン…アレ?そんなもん…?な~んか少ないよう…)と思った途端にタカシは、罪悪感のような妙な気持に襲われた。タカシは、パっと瞼を見開き急いでリュックからノートPCを取り出し、訪問記録を最初からチェックし出した。

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それは、焦りにも似た感覚で…「1人、2人、4人、3人、7人、2人…1人…まさか?」そう…1社で5人以上のPowerBuilderエンジニアが居ると回答してくれたところが少ないのだ。数えたら、たったの4件だった…大企業でしかもグループ全体で11名と説明してくれた先以外は、9名、7名・6名と答えた3件しかない。(ちょっと待って…イヤ、インタビューしたところの開発システムはどこもかなりのオブジェクト数だったぞ…だって、「これだけの規模をたった3名で…ですか?へえ~凄いですねえ」とか自分でもなんか呟いたぞ。そう…2~3名だった先が結構あった。しかも、役割も設計と開発など分けていないお客様ばかりだ。なのに…なぜ自分は…?)とタカシは、自分自身に居心地の悪さを感じた。当日会わなかったエンジニアを足しても40社で150人程度…?どうして少ないと思った?

確かに、この世界のPowerBuilderエンジニアは、ほとんどがエンドユーザーの社員だ。元の世界では、タカシ自身が居たのは大きなシステムインテグレータ企業だった。

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もう慢性的にシステムエンジニアが不足していた世界、それでも中規模システム辺りからは「分業型システム開発」と表現したら良いのか?人工ビジネスが主流の中でPM、設計エンジニアとプログラマーなど役割が明確なメンバーで構成される分業型プロジェクトを編成してユーザーシステムを開発するのが当たり前だった。でもタカシは、「1,000人月のシステムだぜ」など、まるでその数が多い方が偉いような価値観が嫌だった。(そりゃ分業型だとエンジニアの数は不足するわな…)と当時のタカシは、ややバカにしたように呆れていたのだ。属人的…?と揶揄されようが、少人数で設計も開発も行う方が品質も安定するし、ユーザー様とのコミュニケーションも緊密でシステムが完成した時の達成感を一緒に分かち合える。エンジニアの技量も早く上がる。

それこそ、エンジニアの生産性を格段に上げるための道具(IDE)は非常に重要な要素で、タカシはPowerBuilderが最適だと惚れ込んだのだ。

これまでインタビューした約100人の方々は「エンジニア不足で困ってるよ」などの話を誰一人しなかった。つまり、タカシにすればこれが自然なはず…元の世界のときより、PowerBuilderの性能も機能も凄く良い…。なのに、「40社で100人程度…が少ない」と認識したさっきの感覚に言いようのない気持ちの悪さを覚えたのだ。

タカシは、元の世界に居た自分、そして今この世界に存在している自分、この二つの中に存在するギャップが凄く気持ち悪く、どこに矛盾があるのだろう??と考え続けて、やがて元の世界の記憶を辿ることにした。

(あの最後の記憶…そう、元の世界でのあのマイグレしたシステムは凄かった…。PowerScriptオブジェクトが全部で1万5千くらいだったかな?DataWindowオブジェクトは、2万はあったと思う…。だからシステム全部のコンパイルなんて半日仕事…夜中にコンパイル実行して翌日昼頃終了なんて当たり前っ…ッ。エッ?!‼…ン…ソッカ?)

タカシは心の中で奇声を発しつつ、一目散にミーティング中のアクーツクとチェリコのところに駆け寄って「ちょっといい?アクーツク…。なあ、例えばDataWindowオブジェクトが2万程度でPowerScriptオブジェクトが全部で1万5千くらいのシステムのコンパイルってどれくらい時間掛かる?」と唐突に尋ねた。アクーツクの対面ではチェリコがキョトンとしている。「急になんだあ?タカシ…えらくでかいシステムだけど…コンパイルって…終わるまでの時間のことか?」と面倒くさそうに確認するアクーツクにタカシは元気よくウンウンと頷いた。アクーツクは、少し頭の中で計算する感覚で…「まあ…一時間程度は掛かるかな?」と答えた。

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「わかった!ありがと…」タカシは即答し急ぎ自席に戻った。アクーツクは「え?なん…なんだ?ったく」と呆れたようにチェリコと顔を見合わせて二人同時にタカシの方を向いた。

(オレは、バカだ…単純なことなのに…気づかなかったなんて…。こっちの世界で得たチート能力が邪魔したのか…そう!元の世界のPowerBuilderのコンパイラーは、あのとき遅かったんだ!その記憶が気持ち悪さの原因だ。イヤ…遅いって言うか?こっちのPowerBuilderのコンパイラーが、超絶早いんだって。そうなんだよ…エンジニアの生産性で一番厄介なのが、コンパイル時間の短縮だ…これはコントロールしづらいのだ。この時間は、エンジニアの生産性に直接影響する。元の世界ではエンジニア不足は、恐らくどんどん深刻になってくるだろう。ならば、エンジニア一人一人の技量が肝だ…お客様と打ち合わせし、自分で設計し、自分で作る…その時に重要なのは、道具の良し悪しだ…。ねこぴのいる元の世界…確かPowerBuilder2022がデリバリーだったはずだ。ということは、次のバージョン辺りで、かなりコンパイル速度がUPするはずだ。PowerBuilderが、どちらの世界でも納得できるところは、常にエンジニアの生産性を上げる改良に全力を注いでいることだ。それ以外のことには、あんまし関心どころか?一切、余計なことをしないけど。)

タカシは、つい先ほどの自分とは別人のように陽気になり、ねこぴへの今回の報告の仕方を整理し出した。

・40社でたった150名程度のエンジニアで、ものすごい数と規模のシステム構築をしている

・分業なんてしない、エンジニアは設計も開発も同時に出来る技術者のことだ、しかも早く一人前になれる

・心配しないでよい。PowerBuilderのコンパイラーはそのうち、超絶早くなるぜ!    以上

タカシは、大きく深呼吸をしてからねこぴスティックのボタンを押した。

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