異世界に転生したらPowerBuilderが、最強だった…?Vol.6

異世界に転生したらPowerBuilderが最強だった Vol.6

まだ肌寒い日が続く春が遠く感じる朝に、タカシは、少し困ったような表情で頬杖をつきながらオフィスから窓の外を眺めていた。
「ねこぴ、苦労してんだなあ。助けてあげたい…なんとか良い知恵があれば…うーん…」大きくため息をついた。

前回意気揚々と報告した時、ねこぴは「ありがとにゃ!そうか… PowerBuilder は期待通りに進化してくれているにゃ~♬」とホントに喜んでくれたのもつかの間…。

しばらくしてねこぴからこんな声が届いた。
「タカシ…あのにゃ、こっちの世界ではクラウド化の進展やら DX 化推進含めて、システム開発ニーズはホントに増えているにゃ。それ自体はとってもいいことなんだけど、これまで培ってきたソフトウエア資産を大した評価もせずに刷新する趨勢は大きく変わってないんだにゃ…」

タカシは、そのことに憤りを感じつつも、冷静な自分も認識した。

「PowerBuilder 2022 R3 が発売されてからは、 PowerServer 化で、これまで PowerBuilder で開発した資産を有効活用できるようになったにゃ。これはもちろん、一部では評価されているにゃ」

(そりゃそうだろう、なんの問題もないからな。こっちの世界は当たり前…だけど…)

タカシは、ねこぴの言いたいことがある程度予想できていた。

「けどにゃ、大半は PowerServer 化の検討にまで辿り着かない…!『画面も古めかしいし、クラサバシステムでしょ?』という周囲の無頓着な認識を覆すまでのパワーが…ッどうもお客様にも無いにゃ…。どうしたもんかにゃあ…?」

(……ッ)

ショックを受けるタカシ

タカシは、ねこぴの辛さがこの異世界に来てからホントに痛いほどわかる。

こちらの世界には、そんな考えを聞いたことがない。画面が古めかしい?だったら、 PowerBuilder の追加機能の UI テーマ変更や RibbonBar コントロールでカスタマイズして、よりビジュアルに直感的な使い方に変えればいいだけだ。
PowerBuilder が良いのは、こうした新しい機能も簡単に使えて、しかも開発生産性も高いことだ。

もちろん、全てのシステムで PowerBuilder が一番なんて思ってはいないが、「業務ソフトウエア開発」分野でPowerBuilder 以外に候補に挙がる IDE は思いつかない。
自慢じゃないがタカシは元の世界で、たくさんの開発言語や IDE を仕事で使ってきたことがあるからだ。

DataWindow との出会いもそうだが、それこそ、この数か月間に多くのエンジニアとの出会いのなかでも感じたことだ。

お客様のシステム説明を幾つかの画面遷移を見せてもらいながら傾聴している時も、(あれ…なんで、このタイミングでこんな表示が?)と違和感を抱いて尋ねたことがある。
業務上のプロセスにおいて自社特有の背景やお客様独自の都合があり、それにこのタイミングで柔軟に対応して値を表示することが、お客様の早期の判断材料に正確さやシナリオを加えて全体の取引拡大に繋がっているからだということを聞いて(なるほど!)と納得することも多い。

システム化の目的を明確に認識し、そのために必要な開発を行うこと、すなわち『手段の目的化』の要素が見当たらない。
大袈裟に言えば、自社を取り巻く市場環境に柔軟に業務システムが対応することが、自社の成長を支援しているとのシンプルな発想だからだ。

元の世界では『クラウド化の本来の目的はなにか?』の軸がどこかでブレることが多かった記憶がある。

サービスを提供する企業の宣伝文句に乗せられ、本来実現したい成果以上の効果が得られるという期待感が膨らんでいく。そうしていつのまにか『手段であったクラウド化が目的』に変質したことを幾度となく見てきた。

今となっては、それすら自分がいた日本という国そのものの特性だったのか?と飛躍させないと後悔の念に苛まれる気もした。
だから、無意識に元の世界の時の記憶を思い返すことを拒否して、冷たいようだが冷静な自分を認識してしまう。

「…俺ってズルいのかな?」窓の外を見ながら小さく呟いた。

出社するニーナ

「タ~カ~シさん、どうされたんですか…?」
とある同じ人間の女性が、ニコっとしながらのぞき込むように声をかけてきた。

「あ~ニーナさんか、おはよう…!今日は出社なの?早いね、お子さんの学校は?」と思わず尋ね返した。

彼女は、小さな男の子がいて普段は在宅勤務が中心だから、オフィスで会うことはちょっと稀なのだ。
「ハ~イ、今日が今年最後のスケート教室なんで、朝早くからお弁当を作って送ってきました」と穏やかな表情で彼女が言った。

しっかり者で PowerBuilder にも精通したエンジニアの一人、タカシも頼りにしている。

いつもはモニター越しでの会話ばかりだから、今朝は妙に新鮮な感じがして、沈んだ気持ちが少し和らいだ。

「また、元の世界に居るねこぴさんからの相談ゴトで悩んでるのですか?」とニーナが聞いてきた。

「エッ?なんでわかるの?」(ヘッ…俺っていつもそんな態度なのかな?)と不安になって聞き返した。

ニーナは笑顔で「分かりますとも~」と応えた。
「そっかあ…普段こうして対面で会うことの少ない君に言われるとは…申し訳ない」と頭を掻きながらも、なぜだかニーナに今回のことをテーブル席に移動して丁寧に説明することにした。

彼女は、意外と真剣な面持ちで「フンフン、なるほど…」と聞き入ってくれたので、タカシも心につかえていたモノが、話すだけでずいぶんと減った感覚になる。

ニーナは、タカシの話を聴きながらも何かしら思いふけるような仕草を見せる。その時には「手段が目的化してるって言っても、なっちゃっているやつには、わかんないだろうな。正しいって思ってるんだからな…」と愚痴っぽい独り言なども挟みながら続けた。

そうするとフッと顔を上げたニーナが、ニタ~ッと意地悪い表情で突然「タカシさん…クイズです。人って、アッもちろん他の色々な種族も含めてですが、何に投資するものですか?」と聞いてきた。

「えっ投資ってなに?株とかそういう類の話?」「もちろん、それも含めてです!」

(藪から棒になに~?なんなの~??全く!)

ニーナが更に言った。「ヒントです。私が今一番投資しているのは、一人息子のテツヤです。なんで…でしょうか?」

(株と息子?なにそれ、トンチクイズ?ますますわからない…)

「ハイ!ブブーッ!時間切れ」

「なんなの?正解教えてよ~!」タカシは、不満げに言った。

するとニコッとしてニーナがこう言った。 「答えは、『成長する』から投資するのです。」

「タカシさん、株ってその企業が成長すると考えるから自分のお金を投資しますよね?私は、息子のテツヤを愛しています。だから愛情を惜しみなく注げますし、自分の時間を削っても息子のために迷いなく使えます。風邪を引いて熱でも出たら徹夜も厭いません。

投資という表現は適切じゃないかもしれませんが、成長する息子を毎日実感しているからこそできることです。後輩の育成も、あの子たちが成長する姿をみたいから教えますよね?
まさしくシステムも、企業の成長を支援できると思うから、経営者は投資するんじゃないですか?」と一気に語った。

タカシは、ニーナの話に思わず聞き入ったのと同時にまだ彼女の伝えたい真意を図りかねている。するとニーナから予想しないコトバが返ってきた。

「手段が目的化したっていいじゃないですか?」

「エッ?」

とあまりに意外なニーナの言葉に思わず反発しそうになった。

「その人たちにとっては、その手段を手に入れたら自分たちが成長できると思うんですから」ニーナは少し気を落ち着かせながら続ける。

「息子は、いつだったか買ってあげたミニカーが大好きで、毎日そればかりで遊んでいます。じっくり観察したりいじったりして、最近はそのミニカーを持ってきて『ハンドルって何?』とか『裏に書いている文字はなんて書いてあるの?』とか尋ねてくるんですよ。

ミニカー

それでね、彼にとってのミニカーは、彼自身が成長するとっても大切なものなんじゃないか?ってタカシさんの話を聴きながら思ったんです。そうしたら、あなたのいた世界の PowerBuilder 技術者がテツヤと重なって…そして、自分にも重なった…。」

タカシは、まだ真意が掴めないながらも不思議とニーナの話を静かに聴いている。

「これは自身の反省ですけど、 PowerBuilder ってたくさん機能がありますよね?一度は使ってみたいなあ…って思いながら実際にまだ使っていない機能がたくさんあることを思い出したんです。なんで、それに興味を失ったんだろう?って。必要ないから?いや、違うなって」と真剣な顔でニーナが語る。

「正直言って、自分がその思いを見失っていたんです」と謝るように静かに話した。

タカシは、恐る恐るニーナに向かって「つまりは?」と聞くと伏し目がちだったニーナが真剣な眼差しでタカシを見据えた。

「そうです、私自身の成長が止まっているのです」と答えた。

確かに元の世界の PowerBuilder 技術者も、長い年月のなかで最新版までの機能を一体どれくらい使っているだろう?改めて問われると全くわからない。

タカシ自身、元の世界に居た頃「今度は時間を掛けてこの機能もあの機能も使ってみよう!」とワクワクしたことは覚えている。

こっちの世界でたくさんのお客様に訪問した時にも、自身が使ったことがない機能を活用しているシステムの説明を受けて、感激した経験をいくつも思い出した。

ニーナは、そう考え込んでいる自分の顔を見てシッカリした口調で「タカシさん、勿体ないですよね!自分たちもあなたの元の世界の人たちも! PowerBuilder 技術者として、まだ使ったことがない機能が多いのに…ね」と言った。彼女の真意が、今わかった…。

そう!自分が批評家に成り下がってどうするんだ!

考えてみれば PowerServer もそう!ねこぴも言ってたが、以前… PowerServer 移行で苦労したエンジニアが多かったそうだ。

だから今の PowerServerが全然違うんだという説明まで至らない、と嘆いても仕方ない。実際に、クラサバ版と PowerServer 版では、遜色ないくらい確実に移行できることを具体的な事例やデモを通じて、その場で体験してもらえばいい。どっちがどっちか?すら区別がつかないレベルの移行品質なのだから。

考えるタカシ

そして『一度は使ってみたかった機能』も、実際のコーディングから動画撮影して、 Before → After で見せればいい。
幸いにも、こちらの世界では、たくさんの心当たりがある!再訪して、どこまで事情を説明して、意図を汲んでくれて協力してくれるお客様がいるか?今後の交渉次第だが…世界は違ってもエンジニア同士だから、動画で見せれば瞬時にその機能の成果を認識するだろう!「百聞は一見にしかず!」だ。

「周囲の無頓着な認識を覆すまでのパワーがない」ことをお客様だけの責任にしてはダメだ!具体的に、作り方に時間をかけて一つ一つの機能に重点をおいて事例説明をしてから話が始まるんだ。
これなら、何回も見られるし、こちらの世界で作成して、それをねこぴに転送すればいい。
そう!タカシ自身が、出来ることなのだ。

PowerBuilder の機能について、もっともっと具体的な事例動画で情報提供していけば…まずはそれからだ!

タカシは、ニーナの両手を握ってびっくりしている彼女に向かって
「ありがとうニーナ!!!今日、君が出社して俺の話を聴いてくれたことは、ホントに良かった!ブツブツ愚痴る暇なんてない状況を作ってくれてホントに感謝するよ!」と伝えた。

ニーナは、遠慮気味に握る手を放して、「ハイ!私もお役に立てて良かったです。自分自身にとっても…ありがとうございました」と最敬礼をビシっと決めた。

タカシとニーナは、二人で大笑いした早朝だった。


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